「会社さん」は存在しない。変えるべきはそこにいる同じ人間──副業と会社についてサイボウズ青野社長と考えた | サイボウズ式
そうです。今回この本を書きたいと思ったきっかけのひとつに、サイボウズの副社長であり、サイボウズUS社長でもある山田理(おさむ)がよく話す言葉があります。
何か意思決定をしようとするとき、つい「会社のためになる」とか「会社にとって」という表現をしてしまうけど、「会社さんはおらへんねん」と彼は言うんです。
私たちは無意識に会社を擬人化して、人格を持たせてしまっていると。
青野
はい。たとえば、このオフィスは「サイボウズ」じゃないし、当然「サイボウズ」という人もいない。サイボウズという会社はあくまで法人であって、バーチャルな存在なんです。
今回のテーマのひとつが「フクギョウ」です。サイボウズでは「副業」ではなく「複業」を使っているんですよね。
青野
はい。サブという意味ではなく、パラレルキャリアを持つという意味も込めています。正直、最初は「複業を許可したら会社へのコミット度が下がるのでは」と思っていました。
ただ、よくよく考えてみると、私も家事育児を家でやっていますし、広い意味では実はみんな複業をしているぞ、と気づいたんですね。
なるほど、複業で体調を崩してしまう場合もある、と。青野さんは、その点についてどう考えていますか?
青野
これは難しいですよね。両方とも真剣にやりたいから燃え尽きちゃう。複業に起こりやすい問題です。
せめて片方の仕事は、自営業のようにコントロールできる状態にしたいですね。両方とも与えられる仕事だと、パンクするリスクがあります。
仕事量を自分で調整できるようにするのは、ひとつの解決策ではないでしょうか。
「カイシャの性格」って言ってしまうけれど、「カイシャさん」はいないので、結局その風土を作っているのは、実在する誰かの性格なんですよね。
たとえば、それは上司の性格かもしれない。だから、その上司が変われば風土も変わるかも。僕たちが戦う相手はもやもやしたバーチャルモンスターではなく、しょせん同じ人間です。そういう見方をすれば、新しい戦い方を考えられるかもしれません。
いつでも辞める覚悟があれば、人は強くなれるんです。「いざとなれば辞めればいいや」と覚悟ができたら「会社に居づらくなったらどうしよう」とは思わないでしょう。
上司を動かそうとしたとき、そう考えている人のほうが話を通しやすいと思いますよ。「こいつは話をちゃんと聞かなければ間違いなく辞めるな。本気だな」と。